素材ファイルなしで経営ゲームを出す
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Salt & Stone は、クォータービューの街づくり・交易ゲームです。何もない島に石切り場や畑、倉庫を置き、島で採れないものは船を出して手に入れ、季節がめぐるあいだ住民を食べさせていきます。私たちのオリジナル作品の中では規模がいちばん大きく、それでいてディスク上のサイズはいちばん小さい部類です。ビルドに画像ファイルも、音声ファイルも、フォントファイルも入っていないからです。タイルも建物も船もパネルも、すべてコードで描いています。
エンジンなしで作る話の続きで、同じ考え方をもう一歩先まで進めたものです。
「素材ファイルなし」とは実際どういうことか
クォータービューの建物は、平行四辺形をいくつか組み合わせたものです。屋根の面、壁の面が2つ、土台。それぞれ単色で、光の向きに合わせて、中間の色より一段暗い色と一段明るい色を使います。船は船体の曲線とマストの線、帆の三角形です。UI は角丸の四角形と文字。30色ほどのパレットと、canvas のコンテキストと座標を受け取る関数がいくつか。うちの美術スタッフは、これで全員です。
見た目の参考にしたのは、レイアウトでは中世の街づくりゲーム(建物ごとの裏庭の区画、浮かんだ HUD、町の看板、画面下に並ぶ建設トレイ)、生産チェーンをひと目で読めるようにする点では、有名な交易・街づくりシリーズです。どちらの見た目もコードでは再現できません。ただ、読みやすさを残した簡略版なら作れます。
代償
- テクスチャは一切ありません。 風化した石も、茅葺きも、水面のゆらめきもありません。全体が「場所」というより「町のきれいな図解」に見えます。経営ゲームなら十分通る見た目ですが、雰囲気で見せるゲームなら致命的です。
- キャラクターの絵がありません。 顔や肖像画、通りを歩く人が欲しくなった時点で行き詰まります。コードは幾何学的な形は得意でも、有機的なものはまるで苦手です。
- ストア用の画像はスクリーンショットです。 キービジュアルを別に作る必要はありません。動いているゲームとは別の絵が、そもそも存在しないからです。
得られたもの
- ゲーム全体で数百KBです。ポータルの読み込みアイコンが1周する前に読み込みが終わります。
- ライセンスを取るものも、クレジット表記が要るものもありません。フォントの EULA も、素材パックの利用規約も、「CC-BY の絵を使っているからクレジット画面は外せない」という事情もありません。
- アートのパイプラインはテキストエディタです。ゲーム中の屋根をすべてスレートからテラコッタに変えるのは1行。冬用のパレットに塗り替えるのは関数の引数1つです。
- 素材のパイプラインのような壊れ方をしません。スプライトが見つからない、間違った解像度で書き出した、アトラスを詰め直していなかった、といったことが起きようがないのです。
限界
前の記事に書いたルールは、ここでも当てはまります。コードだけのやり方は、形と仕組みと読みやすさが中心のゲームまでは通用し、場所やキャラクターが中心のゲームの手前で止まります。Salt & Stone はちょうどその境目にいて、意図して仕組み寄りにしています。サバイバルゲームや物語中心のゲームには本物の絵が必要で、コードでごまかせば、ちゃんと描いたスプライトを数枚使った小さなゲームよりも見劣りします。
現在のビルドはゲームのページから、ブラウザで無料で遊べます。ちゃんとしたデモと呼べるところまで、だいたい8割来ています。
